これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.52〜 2010.1

白鼠屋横町

                  高木神社(墨田区押上2-37-9)

狛犬の台座には奉納年と奉納者、そして奉納者の住む地名が刻まれています。
殆どの場合奉納者が何をしていた人なのか分からないのですが、すこしでも分かると嬉しいものです。
押上の高木神社の狛犬はそんな数少ない例と云えます。

台座に「再建 弘化二乙巳年九月吉日(一八四五年)當村氏子中 外神田平永町代地 白鼠屋藤七」と銘が刻まれています。
高木神社かつては第六天社と呼ばれ祭神の一つに大黒天、大国主命を祀っていてねずみとは縁のある神社です。

奉納者の白鼠屋藤七は外神田平永町代地(現・千代田区神田末廣町の内)の横町入り口に住んでいましたが、
ねずみを商うようになりやがて、屋号の白鼠屋が横町の通り名になったそうです。

ねずみ飼いの流行は宝暦期の京都・大坂などから始まったようで、その後江戸に広まりました。
中でも中国産の南京ねずみ(はつかねずみ)を日本で交配して作り出した変種のこまねずみは、独楽のようにくるくる回るので人気がありました。

ねずみはねずみ算という言葉があるように増えるという意味もあり、この時代は縁起の良いものとされましたが、この横町にはそれに相反するような人が住んでいました

広告に「下谷おなりかいどう・しろねずみやのよこ町・女いしゃ中山玉木」と書かれています。

玉木は朔日丸という避妊の薬を販売、ねずみを繁殖させて売る藤七と子を生ませないことを生業とする女医者が同じ町内に住んでいる…面白い取り合わせです。

参考「江戸町づくし稿 岸井良衛」「江戸の女たちの月華考 渡辺信一郎」



                                    (文/山田敏春・写真/阿由葉