これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.49〜 2009.10

広重のレリーフ

                 船橋太神宮(千葉県船橋市宮下5)

東部野田線船橋駅から船橋太神宮へ行く途中、海老川に架かった海老川橋があります。
由緒によればこの橋が昔、船を複数浮かべて上に板を渡して通行していた、いわゆる船の橋で船橋の地名の発祥の地だといいます。
橋の欄干には船橋太神宮を描いたブロンズのレリーフがはめ込まれていて、近寄って見ると狛犬がいます。
さらにもう一枚構図を反転させたタイルのレリーフもあります。

どうやら明治12年(1890)に出版された三代広重の「成田土産名所尽・船橋駅太神宮」の錦絵を写したもののようです。
西の参道を描いたものですが現在狛犬は居ません。
年代的にみて、おそらく表参道の中程にいる狛犬がレリーフに描かれた狛犬と思われます。

奉納は「本宿」「横宿」「宮之内」「中野木村」の人達。
世話人は「當所五日市」の五人で地元の氏子のようです。
阿吽がハッキリしませんが双方に子犬がいます。
向かって右の台座には奉納年の明治十四年七月吉日(1881)と石工金子勘次郎、左の台座には石工金子長十郎の名があります。
それぞれ一体ずつ刻んだのでしょう。
子犬を撫でていると、宮参りの親子が幸せそうに通ります。
この狛犬さんはこんな光景を数限りなく見続けてきたのでしょう…その度に健やかに育てと願いながら。



                                      (写真・文/山田敏春)