これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.45〜 2009.6

獅子舞と狛犬

塚崎香取神社(茨城県猿島郡境町塚崎2,876

神社には様々な石造物や説明版があり一つ一つ見ていくとかなりの時間を要しますが、狛犬が奉納された時代背景や歴史、文化財などが分かり新たな興味が涌きます。

ここ塚崎香取神社(茨城県猿島郡)は平安時代から伝わる獅子舞が茨城県指定無形民俗文化財になっていて、その中でも雨乞いの舞に面白い話があります。
文化年間の大旱魃の際(文化14年4月から7月中旬)関宿城主久世大和守広誉に依頼され、「天水こぼし」の舞を踊って大雨を降らせとの言い伝えがあります。
また獅子の衣装に施された井戸を意味する井桁紋は、その時大和守から拝領したものだそうです。

香取神社には3対の狛犬がいます。
最も古いのが大旱魃から2年後の文化13年(1816)に奉納さ
れた狛犬。

銘は
奉納御寶前 惣村中 願主八左衛門
  世話人若者中 文化十三丙子年九月吉日

です。

大干魃も収束して無事この年の刈り入れが済んでからの奉納と思われますが、もちろん天候の安定を願っているのでしょう。

地元の石工の作だろうか、頭部が背中か胸の一部のようにみえるほど小さく個性的で、江戸の町の狛犬と違って素朴な印象を受けますが、なかなかどうして旋毛を意味する風車紋(丸紋ともいう)が刻まれていて、華やかな面もある狛犬です。

                                   (写真・文/山田敏春)