これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.113〜 2015.2

本所の石工〜白髭神社

               白髭神社(江戸川区東小松川3-7-20)


江戸川区には江戸期の狛犬が5対もいないようだが、そのうちの一つが白髭神社(東小松川3)に居る。


都営新宿線船堀駅で下車、江戸川競艇場を見てから神社に向かった。
狛犬は参道の中程にいる。
台座銘は
 「嘉永七甲寅四月吉日(1854)葛飾郡小松川 中之庭 氏子中」
石工銘は「本所横堀 石工……
下半分が剥離、文字の一番上の横棒が一本だけ残っている

そこで境内の石造物に本所の石工の名が無いかと調べると、灯籠に
「本所柳原 石工
長右ヱ門 文政七年甲申五月(1824)」
先代鳥居の足元には
「本所四ツ目 石工
長右衛門
の名を見つけた。
なお「柳原」「四ツ目」「横堀」は同じ本所内である。

石工長右衛門は何代か続いた石工で、時代によって住居や作業場を本所内で移していたのかも知れません。
狛犬に遺された銘の横棒は「長」の字の一部と思われ、狛犬の作者は本所の長右衛門としても良いかと思います。


狛犬はどの角度から見ても楽しめる出来栄えです。
顔は大きく90度ひねって参道を向いています。
多めのタテガミは優しく胸の前まで流れ、尾は二手に流れて巻いている。
また胸には胸筋のような盛り上がりがあり、吽像にはオスの印がある。
細部にわたっていい仕事をしている石工だが、耳の形だけが何ともユニークで面白い



                                    
(写真・文 山田敏春)