各種研究会あいさつ |
「考える力を育てる教師の支援(ある民話の教訓から)」 昔読んだ民話のお話をします。 ある所に、貧しい農夫がいました。 ある凶作の年、彼は地主への年貢を納めることができずに困っていました。年貢を今日は納めに来るだろうと毎日待っていた地主はしびれを切らして、年貢を取り立てに来ました。地主がやって来たとき、農夫は娘とともに家のそばの河原にいました。地主は農夫の美しい娘をチラリと見て「年貢の代わりに娘をよこせ。」と言いました。動転した農夫は、泣いて地主に慈悲を乞いました。 さすがに哀れに思ったのか、地主は次の提案をしました。 「では、娘が助かるチャンスを与えよう。わしが河原の小石を両手に一つずつ拾う。片方の手には白い石、もう片方には黒い石だ。そして小石を握ったまま、娘にどちらかの手を選ばせる。その手を開いて黒い石が出れば、娘は連れていく。だが、もし白い石ならば、年貢も娘も免除してやろう」呆然とする農夫に背を向け、地主は小石を拾い始めました。 ことの成り行きを黙って眺めていた娘の注意深い視線は、この時地主の手元を見逃さなかったのです。なんと地主は、右手にも左手にも黒い石をそっと握ったのです。 娘は努めて平静を装い、地主が前に突き出した二つの拳のうち、片方から小石をさっとつかみ取り、すばやく河原に落としてしまいました。それは河原の無数の小石の中に紛れてしまいました。 あっけにとられる地主に向かって娘は言いました。「あらっ、私ったら、手が滑ってしまって・・・・。でも、大丈夫ですわ。地主様のもう片方の手に残った小石を見せていただければ、私がさっき落とした小石の色がわかりますわね。」 地主は、年貢も娘もあきらめて帰っていったとさ。 この民話から二つのことを学びました。 一つは、窮地に立たされたときこそ、冷静に考えることが自分を救う道であること。 二つは、どんな状況の時でも、懸命に考えれば何かの解決策が見つかるということ。 学校教育の場に置き換えると、 ○ 問題解決のためには、冷静に考えること。 ○ 問題解決のためには、諦めず粘り強く考えること。 であろうと思います。 この視点に立った学習環境つくりと学習支援が大切だと思います。 体験学習が叫ばれている昨今です。体験した後に子どもの知的好奇心をくすぐり、気づき、考え、創造する社会科学習の創造が今問われていると思います。 このような意味から、本日の先生方の研究発表をお聞きし、学びたいと思います。 |
第36回熊本県小学校社会科研究会阿蘇大会 閉会の挨拶 本年度の県小社研の研究主題は、「ともに未来を育む人間を育てる社会科学習」です。研究の視点として、人間の生き方に迫る学習活動、自らの生き方を見つめる評価活動、生き方に迫る人間教材の開発を掲げています。このテーマに沿ったすばらしい阿蘇大会でした。 本研究大会を開催するにあたっては、阿蘇支部の諸先生方のご苦労は大変なものがあったことと思います。また、阿蘇教育事務所、阿蘇郡管内町村教育委員会そして、会場を提供していただいた碧水小学校、乙姫小学校の皆様方のご支援・ご協力があったればこその大会であったと思います。諸先生方のご苦労をねぎらいますとともに、関係各機関に対して深く感謝申し上げます。 ところで、中央教育審議会、教育課程審議会の答申を受け、先る17日に、新しい学習指導要領案が示されました。小学校においては、平成12年度から移行措置にはいるそうでありますが、ゆとりある学校生活の中で、学校、家庭、地域社会が密接に連携しあって子供たちの生きる力を育む教育が示されています。生きる力とは、「社会がいかに変化しようと子供たちが自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよい課題解決を図る資質や能力」であります。この生きる力は、子供たちの生活すべての中で育むことはもちろんですが、社会科教育の果たす役割は今後ますます重要なものがあると思います。 このような教育界の急激な動きの中で、平成11年度県大会は、上益城郡で開催する予定であります。上益城郡内では地教委主催の教科等研究会というのがございます。現在、この研究会の社会科部会に所属している先生を中心にその準備を進めているところでございます。 今年度の研究テーマを受け、研究の仮説を「児童一人一人を理解し、学習活動、評価活動、教材開発を工夫すれば、生きる力としての問題解決力や豊かな人間性が高まり、ともに未来を育む人間を育てることができるであろう」とし、その視点の一に、生きる力を育てる学習活動の工夫、二に、自らの生き方を見つめさせ、共感的に理解する評価活動の工夫、三に、地域の特性を生かし、生き方に迫る人間教材の開発をあげ、研究を進めているところでございます。 現在の予定では、平成12年2月、御船町で開催する予定です。今回の阿蘇大会同様たくさんの先生方のご指導、ご支援、ご来場をお願いしまして閉会の挨拶といたします。 本日はお疲れでございました。 |
「生涯にわたって学ぶ姿勢を持ち続けましょう」 先生方はオオカミに育てられたカマラという少女のことを知っていることと思います。この少女は生まれて間もなくオオカミにさらわれて、8歳までオオカミに育てられました。その後、人間の村に連れ戻された少女は、牧師夫妻によって人間らしさを取り戻し、17歳で短い生涯を終えたのです。村に連れ戻されたときのカマラは、裸で四つんばいで歩き、昼は眠り、夜になるとはい回るなどしていたのです。 牧師夫妻はこのカマラを、夜は眠り昼に活動するように、四つんばいでなく2本の足で立って歩くように、手を使って食事や作業をするように、言葉を使うようにしていったのです。牧師夫妻の深い愛情と根気強い努力で、カマラは人間としての資質や能力を開花させていきました。 私はここに教育の原点を見るのです。教育は「人間が人間を人間にしていく営み」です。単に知識を伝達すればよいというのではないのです。実に崇高でやりがいのある仕事です。その仕事に私たちは従事しています。ここで忘れていけないことは、自分が子どもより優れた人間であるという思い違いをしてはいけないことです。人間は誰しも生涯にわたって不完全な存在です。ですから、私たちは絶えず、自分を磨く努力をしていかねばならないと思います。子どもからも多くのことを学びます。先輩教師からもたくさんのことを学びます。それらは、教育者としての使命感であるとか、人間の成長発達についての深い理解、子どもに対する教育的愛情、専門的知識などです。このような教師としての資質や力を組織的・計画的に学ぶのが初任者研修です。この初任者研修に取り組む先生方の今の姿勢をを今年1年で終わらせるのではなく、生涯にわたって持ち続けて欲しいものです。 最後に江戸時代の儒学者佐藤一斎の言葉を贈り、挨拶に代えます。 「少にして学べば、即ち壮にして成すあり。壮にして学べば、即ち老いて衰えず。老いて学べば、即ち死して朽ちず。」 |
平成13年度上益城郡教科等研究会推進委員会あいさつ 熊本県教育改革大綱策定の趣旨に「国際化、情報化、少子・高齢化などが急速に進展し、生涯学習社会の実現が求められている中、これからの教育は、自分で課題を見つける力、自ら学び自ら考える力、意欲を持って活動しよりよく問題を解決できる力を育成することが重要。」と述べてあります。 また、平成13年度義務教育課取組の方向「2」能動型教育の展開では「多くの知識を教え込みがちであった教育から、児童生徒に自ら学び自ら考える力を育成する教育への転換を図る。」と述べています。 これらは、中央教育審議会答申をはじめとして教育課程審議会答申そして学習指導要領改訂の視点である「生涯学習の視点」そのものです。つまり、学校教育を内容知から方法知へと転換し、生涯学習社会に主体的に生きる子どもを育てることであると思います。 私は生涯学習社会とは「家庭においては、子どもの自主的、主体的な生活体験を大切にし、親子や家族で楽しく学習に取組み、学校においては、個性の尊重と生涯にわたる学習の基礎を培い、勤労観、職業観等生活に不可欠な知識や技能を身に付け、学校を卒業し社会に出た後も、自らの能力、適正、意欲に応じて学習機会を選択して学ぶことができ、いつ、どこで学んでもその成果が適切に評価されるような社会」ととらえています。 この生涯学習社会に生きる子どもたちには「1度きりの人生を大事にする態度、向上しようとする心、人生を充実させることに生きがいや生きる目標を見出そうとする心」つまり自尊感情の醸成を図るとともに、基礎的・基本的事項の定着、自発的な学習意欲と自ら学ぶ学び方を身に付けておくことが最も大切なことであると思います。 このことが学校で学んだ知識を生きる知恵つまり「生きる力」にかえるものと確信しています。 本教科等研究会では、郡内の先生方が自ら研究教科を選択し、志を同じくする先生達で教科グループを構成し、新しい学習指導要領の趣旨を体して教科指導法の研究をはじめとした各種研究により多くの成果を上げてきました。 本年度は新しい学習指導要領への移行最終年度です。来年度から始まる教育課程への対応はもとより、巷間話題となっています「学力低下の懸念」に対して新学習指導要領の趣旨をきちんと説明でき、保護者や地域の方を安心させ、子どもに確かな学力、自ら学ぶ意欲や態度・方法、つまりどれだけ理解したかという「学んだ力」よりも、学んだことを活用し「自ら新しいことを学ぶ力」を身に付けさせるための力量が私たちに求められています。 平成13年度はこのような種々の課題を視野に入れた教科の運営に心がけて、本教科等研究会が益々充実しますよう先生方のお力をお貸しいただくことをお願いしまして挨拶といたします。 |
益城町学校保健会全体研修会 会長挨拶「自分を大切にする心を育てましょう」 本日は益城町学校保健会研修会に多数ご参加いただきありがとうございます。 今年の夏はことのほか猛暑続きでございました。連日35度近い猛暑でした。ところが北海道は夏日をほとんど観測しないような冷夏だったということです。釧路市は最高気温が18度という日が幾日もあったようです。 しかし、自然の移り変わりはよくしたもので、23日の処暑を過ぎた頃から朝夕はしのぎやすくなりました。夜になりますと、庭の片隅ではこの時期を待っていたかのように虫の声が鳴り響いてきました。 長かった夏休みももうじき終わろうとしています。子どもたちはこの時期、2学期のスタート線に並ぶ心や体の準備、学習の準備等をしていることと思います。この夏休み期間中に大きな事件・事故もなく子どもたちが健やかに過ごせましたのは学校・家庭・地域社会が一体となって子どもの成長を見守っていることの成果であろうと思います。 昔から「人は家庭で育ち、学校で学び、地域で伸びる」と言われています。今後も学校・家庭・地域社会一体となった子育て支援を続けて参りましょう。 ところでこの夏も乳幼児・児童の虐待に関する事件が数多く報道されました。また、出会い系サイトでの犯罪が急増しているようです。1月から6月までに警察が摘発した事件数は793件昨年と比べて2,6倍だそうです。被害者692人のうち未成年女性が85、7%で、 そのうち高校生が48、4%、中学生が25%だそうです。 このような事件を見聞きするにつれ、「自分を大切にする心」つまり自尊感情を幼い頃から育てることの大切さを痛感します。益城町の学校保健会では子どもたちの生きる力を育むために、心の健康づくりに取り組んでいます。その一端を25日に行われました熊本県学校保健研究協議会で、津森小学校の実践例を中心に児玉泰子先生が発表しました。相手の感情の理解の仕方が苦手、トラブル解決の仕方が定着できていない、自己肯定感が弱い、自己有用感が少ない等の子どもが多い中、このような自尊感情を高める取組はすばらしいと高い評価を受けました。益城町学校保健会に関わる者としてうれしく思いました。 私たちは、子を持つ親として、皆さんの宝物である子供を預かって成長の支援する立場にいる者として「子どもを育てるとは」「心豊かな子どもに育てるには」「もっと子ども一人一人の自尊感情を高めたい。どうすればよいだろうか。」といつも自問自答しています。自問自答しながら目の前にいる子どもの姿を通して「これでよかったのだ」「これでいいのだろうか」安堵したり悩んだりしています。 そこで、昨年まで上天草病院で不登校や喘息の子どもたちと関わられ、、現在は熊本大学病院総合診療部で乳幼児から大人までを対象に、幅広く心のケアーに努めておられま岡崎 光洋先生をお招きして「現代における望ましい子どもとの関わり」の演題でご指導をお願いしています。 本日は岡崎先生から、家庭教育の在り方について大きな示唆を与えていただけるものと期待しているところです。 本日の研修会が稔り多いものとなりますことを祈念いたしまして挨拶といたします。 |