熊本県校長会等あいさつ




            熊本県小学校教育研究会総会あいさつ

 中央教育審議会委員、教員養成部会長の高倉翔氏はこれからの教員に求められるものの二面性として、@教科指導や学級経営などにおける専門性に関して求められる教員像の側面、A保護者・地域住民にたいして説明責任を果たす「信頼される学校づくり」を担う教員の新たな資質能力の側面 をあげています。
 また、これから求められる教員像として、昭和62年の教養審が示した「教育者としての使命感、人間の成長・発達に付いての深い理解、子どもに対する教育的愛情、教科等に関する専門的知識、広く豊かな教養、これらを基盤とした実践的指導力」に加えて、「得意分野を持つ個性豊かな教員」、「現場の課題に適切に対応できる力量ある教員」が強調されていると述べています。
 教員像は、即ち学校像でもあります。
 新しい学習指導要領の基、確かな学力を身に付ける指導と評価の在り方に関する議論が沸騰している今日です。
 このような中、熊本県小学校研究会が熊本の教育界に果たしてきた役割は大なるものがあります。
会則の3条に
 「本会は小学校の教育に関する問題を研究し、その向上を図ることを目的とする」とあります。
 本日は、13年度の事業報告、さらには本年度の事業計画及び予算に関する審議を予定しています。本小学校教育研究会がますますの充実発展を期するものです。
 活発な議論をご期待申し上げご挨拶といたします。




          教えるプロとしての教員の資質の向上をめざして

 遠山文部科学大臣の平成15年年頭の所感の一節に、次のような文があります。
 「人間力戦略ビジョン」として、教育改革や科学技術・学術の振興、スポーツ、文化芸術の振興に全力を尽くします。
 「確かな学力」と「豊かな心」の育成が初等教育段階における教育改革の重要な柱であり、これらは、子どもたち一人一人に新世紀を生き抜く力を育むうえで極めて大切であると思います。昨年から実施されている新しい学習指導要領のねらいは、子どもたちに基礎・基本をしっかりと身に付けさせ、自ら学び自ら考える力などの確かな学力を育むことにあります。これによって「画一と受け身から自立と創造へ」と教育の在り方を大きく展開しようとするものです。
 子どもたちの学力については、国民の間の不安の声が聞かれるところです。学習意欲を高める学力の質を向上させる「学力向上アクションプラン」の実施など総合的な施策を進めます。
 豊かな心の育成に関しては、基本的な規範意識と倫理観、公共心や他者を思いやる心を育むことが重要であり、このため、家庭や地域の教育力の向上、心に響く道徳教育の充実、奉仕・体験活動、読書活動の推進を図ります。
 大臣が強調しておられます「確かな学力」と「豊かな心」の育成は、社会の要請です。この要請に応えるには、教えるプロとしての教員の資質の向上を図ることが不可欠です。教員資質の向上を図るには、日頃の教育実践の充実、研究体制の整備・充実が求められます。
 このような中にあって、本研究部会の全18部会(国語・社会・算数・理科・音楽・図画工作・体育・家庭・道徳・視聴覚教育・へき地教育・特殊教育・保健・図書館・特別活動・書写・生活・生徒指導)に期待される役割は大なるものがあります。18部会は、それぞれがその期待に応える授業研究会や研修会・調査研究等に積極的に取り組まれています。
 本研究会の教育実践が本県小学校教育の充実発展に大きく寄与し、教えるプロとしての教員の資質の向上を図る指針となるとともに、県下の子どもすべてが「生きる力」を身に付け、健やかで、たくましく、心豊かな子となることを願ってやみません。
 終わりに、熊本県教育委員会、市町村教育委員会、熊本県小学校長会等関係各位のご支援、ご指導に対し心からお礼申し上げ、巻頭の言葉といたします。




           「人は家庭で育ち、学校で学び、地域で伸びる」 

 「教育ハ建国ノ基礎ニシテ師弟ノ和熟ハ育英ノ大本タリ。師ノ弟子ヲ遇スルコト路人ノ如ク、弟子ノ師ヲ視ルコト秦越ノ如クンバ教育全ク絶エテ国家ノ元気阻喪セム」
 これは、明治30年10月10日、旧第五高等学校開校記念日における夏目金之助(漱石)の祝辞の一節です。
 漱石は「師弟の和熟が育英の大本」といっています。今、学校に求められているのは、「師弟の和熟」を基礎にしての学校、家庭、地域社会が信頼関係を一層密にした教育活動の展開です。それをマネジメントするのが校長の職務です。
 このことは、学校、家庭、地域社会がその役割を明確にし、それぞれが協力して豊かな社会体験や自然体験などの様々な活動の機会を子どもたちに提供し、自ら学び自ら考える力、即ち「生きる力」をはぐくむことを目的とした学校週五日制のもと、ゆとりの中で教育活動を展開する教育課程の管理そのものです。
 私は次の3つの視点から学校経営にあたっています。それは、生涯学習の視点、人権尊重の視点、そして、開かれた学校づくりの視点です。
 本校では、地域の教育機関、社会教育団体、生涯スポーツ団体、商工会、郷土史家、園芸農家、お年寄り等と連携しながら子どもたちに豊かな体験活動を提供し、「生きる力」をはぐくむ活動を進めています。
 「人は家庭で育ち、学校で学び、地域で伸びる」の信念で。




            熊本県校長会機関誌 年頭のご挨拶

 謹んで新春のお慶びを申し上げます。
 新しい年を迎えるにあたり、平成15年に県小中学校長会にお寄せ頂きました校長先生方のご理解とご協力に心から感謝申しあげます。また、日頃から学校教育目標を高く掲げ、その実現のために創意あふれる学校経営に積極的に展開されておりますことに心から敬意を表します。
 さて、昨年、県内のホテルがハンセン病元患者の宿泊を拒否するという人権侵害事件が起きました。ホテル側は「宿泊拒否は元患者であることを伝えなかった熊本県の責任」と主張し、県は「ハンセン病元患者と知らせなかったということ自体がハンセン病に対する差別意識の表れ」と主張しました。「宿泊拒否はホテル業として当然の判断」と主張していたホテルが「われわれの対応が全面的に誤っていた。今後は行政の啓発活動にも協力していきたい」との謝罪により事件は解決いたしましたが、私たち県民に多くの課題を与えました。
 この事件はハンセン病について正しく理解しなかった「知のゆがみ」からおきた思いこみが「情のゆがみ」を引き起こし、「意のゆがみ」宿泊拒否という行動につながったものです。
 「ハンセン病に対する無関心や誤った知識による偏見・差別が二度と起こらないように、偏見・差別解消のための普及啓発事業などの取り組みをより一層進めていきたい」と知事は述べておられます。すべての人の人権が保障される教育、啓発活動の一層の推進に当たろうではありませんか。
 また、昨年10月の中教審答申「初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について」では、子どもたちに基礎・基本を徹底し、「生きる力」をはぐくむことを基本的なねらいとする新学習指導要領の更なる定着を進め、そのねらいの一層の実現を引き続き図ることが必要であるとして、次のことが提言されています。
○家庭・地域社会との連携の下「生きる力」を知の側面からとらえた「確かな学力」育成のための取組の充実が必要
○「総合的な学習の時間」等を通じて学びへの動機付けを図るとともに、子どもの実態や指導内容等に応じて「個に応じた指導」を柔軟かつ多様に導入するなどの工夫による「わかる授業」を行い、子どもたちの学習意欲を高めることがとりわけ重要
○「確かな学力」とは、知識や技能に加え、思考力・判断力・表現力などまでを含むもので、学ぶ意欲を重視した、これからの子どもたちに求められる学力
 さらに、校長のリーダーシップの下に全教職員が一致協力し、新学習指導要領のねらいの定着とその一層の実現を期待するとして、以下のことを示しています。
○学習指導要領に示された共通に指導すべき基礎的・基本的な学習内容の確実な定着
○学校の裁量による、地域や児童生徒の実態を踏まえた特色ある教育への取組
○各学校における創意工夫を存分に生かした指導方法等への取組
○各学校が取組の成果を評価・検証し、改善を進めること
 教育改革真っ直中、校長に強い指導力が求められています。子どもたちに「生きる力」をはぐくむ特色ある教育活動を展開すると共に校長としての力量を高める研究と修養に努めたいものです。
 終わりにあたり、校長先生方のご健康とご活躍を祈念申し上げ、新年のご挨拶といたします。




              「管理職としての力量を高めましょう」

 今年の夏は、偏西風の蛇行による異常気象が世界各地で起きています。
 ヨーロッパの高温、中国での大雨、日本での冷夏、そして、熱帯的集中豪雨。7月末の県南地方をおそった集中豪雨では、水俣・芦北地方ではたくさんの尊い命を奪い、建物等へ多大の被害を与えました。ご遺族の方へお悔やみを申しますとともに、被災者の方へお見舞い申し上げます。
 また、7月には私たち教員の耳を疑う様な事件・事故が相次ぎました。沖縄、長崎での中学生による事件、そして東京渋谷での6年生の監禁事件。生命に対する尊厳、倫理観、心の耐性等心の教育の大切さが叫ばれています。
 本県におきましても、生命の尊重や自然に対する畏敬の念、思いやりの心、感謝する心など心の教育の充実を図るため、校長を中心とした指導体制を確立し、家庭や地域社会と一層連携した指導が求められています。
 このような中にあって、学校における教頭の役割はこれまで以上に大切になってきています。
「校長が変われば学校が変わる」と言われていますように、「学校の雰囲気の善し悪しは教頭次第」と言われています。それは、教頭には学校という組織を整理する機能・役割が求められているからです。
 学校という組織は実に多彩であり、それらが複雑に交差しています。それを交通整理するのが教頭の役割の一つでしょう。
 例えば、事務職員と教師との関係、男の教職員と女の教職員との関係、年配教師と若い教師との関係、教材研究中心型の教師と子ども中心方の教師との関係、これらを交通整理し、うまく機能が発揮できる様にするところが「校長を助け、校務を整理する」につながるものと思います。諸機能を交通整理するにはこの組織愛が必要です。組織愛があれば、公正な処理ができるばかりでなく、職務遂行効果が一段と上がります。また、長を補佐する役割の人に求められるのは、頭脳明晰、勤勉、そしてまじめさです。教頭職にも同じことが言えます。
 今年度、教頭職に採用された先生方は、組織愛に燃え、勤勉で、頭脳明晰な方ばかりです。だからこそ、これまでの1学期、校長を助け、組織内の複雑な機能の交通整理も意のままにしてこられたものと思います。
 教頭の職務内容は多岐にわたり、何が本職か分からないほどでしょう。ある時は校長代理であり、ある時は雑務屋であり、教諭の代理であり、PTA副会長・書記・会計であったりと、朝早くから夜遅くまで多忙な毎日をお過ごしのことと思います。多忙であればあるほど、教頭としての本務を見過つことがない様にして、職務にご精励ください。
 皆さんご存じの下村湖人は「次郎物語」で、朝倉先生の口を通して次郎達に「白鳥芦花に入る」という話しをしています。「白鳥芦花に入る」は、真っ白な鳥が真っ白な芦原の中に舞い込むと、その姿は見えなくなります。しかし、その羽風のために、今まで眠っていた芦原が一面にそよぎ出すと言う意味です。先生方がもっている人間性、専門性を発揮され、学校という芦原に羽風を吹かせてください。そのためにも、研究と修養に努め、管理職としての力量を高めていこうではありませんか。
 私ども県校長会でも、新任校長研修をはじめ諸研修会を通して校長としての力量と資質の向上に努めています。
 県教頭会主催の本研修会が教頭としての力量や資質の向上につながりますことを祈念致しまして挨拶といたします。



 
          平成16年度 熊本県校長会 感謝状受賞者代表あいさつ

 僭越ではございますが、受賞者を代表して一言お礼の言葉を申し上げます。
 私、先日、益城町公民館講座である病院長から「ぼけ」についての話を聞きました。
 病院長の話によりますと、人は40歳代からぼけが進行するそうです。その特徴として、@物忘れが多くなる、A物覚えが悪くなる、B頑固になる、C行動が緩慢で判断力が鈍くなる、D脳の視野狭窄におちいるの5つをあげられました。
 私は、このぼけ街道を時速40キロ、50キロ、60キロとスピードを上げながら突き進んできました。それゆえ、子どもたちに最高の教育環境を整えるという学校経営が十分ではありませんでした。また、県校長会への貢献もできませんでした。にもかかわりませず、このような感謝状をいただき面はゆい心地でございます。
 今後は、本会に所属していた誇りと自覚を持って生涯学習に取り組み、ぼけの進行にブレーキをかけながら精進したいと思います。
 終わりになりましたが、本会のますますの充実と発展を祈念してお礼の言葉といたします。本当にありがとうございました。