教育事情紹介(時代は六大宗教)
中学校の社会科では、歴史や地理の授業に、宗教についての学習が入ってきます。対象となるのは、主に三大宗教と言われているものです。これらは世界的にみて信者の多い、仏教、イスラム教、キリスト教で、その発生の生い立ちや、簡単な教義内容などについて勉強しています。もっとも、配当できる時間数は限られたもので、本当にさらっと表面的な事柄をおさえる程度のものです。
公立学校で、特定の宗教に肩入れすることは、あってはならないことですから、これは当然のことと考えていました。しかし、英国では事情が異なっており、学校訪問の際に強く印象付けられましたので、そのことを紹介したいと思います。御存じのように英国はキリスト教徒の数が多く、その中でも、英国国教会と呼ばれる宗派が多数を占めています。分布については、ばらつきがあり、英国北部やアイルランドではカトリックやプロテスタントが多くなってきます。国民の休日にもキリスト教的な雰囲気の漂うものがあり、特にそのことについて何とも思わずに過ごしてきたのですが、実際に身の回りを見渡してみますと、アジア系やアフリカ系の人々も多く生活しており、一目見てキリスト教徒ではない人がたくさんいることも事実です。イスラム教徒の女性は、教義により、人前で肌を出すことが禁じられていますから、スカーフを着用している人が多くいます、教義に忠実ならんと欲せば、生活が窮屈なものになり、生活を優先させれば、戒律に反することも出てきます。多くの人は、その間で、各自の判断で生活しており、スカーフの色も、原理主義的な人は黒、そうでない人はカラフルなものを 身に着けています。これは学校の中で机を並べている子供たちにもいえることで、授業中も黒いスカーフを頭からすっぽりかぶった生徒が、一般の格好をした生徒に混じって授業を受けています。
現地の学校で、6年生(日本でも同じ学年にあたります)の社会科の授業を見る機会があったのですが、そこで見たものは地理でも歴史でもなく、宗教の授業でした。
これは6年生の必修科目で、一年間、宗教についての学習が続きます。ここで取り上げられている宗教は、全部で6種類です。どんな宗教かといいますと、日本で言う三大宗教はそのまま入っています。あとは、ユダヤ教、ヒンズー教、シーク教の3つです。ユダヤ教はユダヤ系の人が、ヒンズー教、シーク教はインド系の人が、主に信仰しています。
授業を担当している教師に、この授業の目的は何かたずねたところ、お互いの立場や生活習慣についての理解を図ることだと言っておりました。多様な価値観や道徳観念が並立していることをしっかり理解できないと、お互いに誤解したり排斥し合ったりすることにつながってしまうからでしょう。
『自分の信仰する宗教に熱心な親から、自分の子供に他の宗教を教えることについて抗議されることはないのか』と担当教師にたずねたところ、にこにこ笑いながら、『そんなことはしょっちゅうだよ。お互いに理解し合うことの大切さを話しても、なかなかわかってもらえないことも多いね。』との答が帰ってきました。そうした摩擦を乗り越えても、多民族都市ロンドンでは、宗教の時間は必要なものになっているようです。