英国紹介 (フーリガンについて)

この6月(1996年)、ロンドンは、大きなサッカー大会の地元開催に、連日沸き立ちました。その名をヨーロッパ選手権と言い、各国がヨーロッパのナンバーワンを目指して、白熱したゲームを展開しました。

さて、こうしたサッカー、それもイギリスのサッカーといえば、嫌でも思い出してしまうのは、過激な応援で知られる、フーリガンたちではないでしょうか。実を言いますと、私の住んでいるWembley(ウェンブリー)という町にはウェンブリースタジアムという大きなサッカー競技場があり、国内で行われる重要な試合が、数多く行われているのです。ということは、フーリガンたちにとっても、ここは拠点(?)のひとつであるということです。私の住んでいる家からは、2キロほどしか離れていないので、大試合の時には、競技場の歓声が聞こえてきます。

彼らの行動パターンを説明してみましょう。まず、彼らは、地下鉄や自家用車を利用して競技場に近づいてきます。そして直接競技場には向かわず、まずは、近くのパブでビールを飲み、一息いれます。概して英国人は、ビールをゆっくり飲みますが、このスローペースが曲者で、飲み終る前に、どんどんサッカーファン達がパブに集結してきます。なにしろ競技場内では、不測の事態を警戒して、一切のアルコール飲料の販売をしないのはもちろん、持ち込みも禁止しているため、やがて彼らは、ビールの飲み貯めをはじめます。贔屓チームの旗を持ち、顔にシンボルマークのペインティングをした連中が(これが国際試合になると、振られる旗はイングランドやユニオンジャックになります)店先で飲んでいるのですから、同じチームを応援する人数はふくれ上がる一方です。このころになると店の方でも、客にビールを売らなくなり、注文しても断られてしまいます。いよいよ大移動の時がやってまいりました。試合時間が近づいてくると、大挙して競技場に向かいます。それぞれのパブから出てきたファン達が、応援歌を合唱し、石造りの建物にその声を響かせながら、長蛇の列で競技場に歩いていく様 子は、なかなか迫力があります。街道沿いは、警察官もたくさん出て、警戒態勢は厳重です。騎馬警官や警察犬も配備されます。(この警察犬が怖いの何のって、大きな犬が、誰彼かまわずほえたてるのです。)特にヨーロッパ選手権の時には、少しでも粗暴な様子を見せた者は、片端から連れて行かれておりました。

 さて、肝心の暴れ方ですが、実は幸いにも、今のところは付近の住民を脅かすようなことはありません。最近では最も警戒された、ヨーロッパ選手権のイングランド・スコットランド戦では、イングランドが勝ち、大勢のイングランドファンは喜んで静かに(といっても例の調子で、応援歌を歌いながらでしたが)去っていきました。

 そして、イングランドナショナルチームにとって最後の試合となった、6月26日の準決勝、対ドイツ戦。試合内容は、白熱した好ゲームを展開しましたが、前半、後半そして延長戦でも決着がつかず、ペナルティキック合戦の6人目で、ついにドイツに凱歌が上りました。多くの警察官の厳重な警備の中を、がっくり肩を落とした群衆の列が、地下鉄の駅に続きました。とても静かに・・・。

 結局ウェンブリーでは暴動は起きませんでした。しかし、その夜、ロンドンの中心部に移動したサッカーファンの一部は、車を破壊するなど暴れ回り、ロンドン全体では、45人が逮捕されました。負けはしたものの、イングランドチームのすばらしい戦いぶりが、彼らからしばらくの間、闘争心を奪ったのかも知れません。

 メイジャー首相は、試合の後のインタビューでこう言いました。

「チームの選手たちは、悲痛な程によく戦った。これ以上彼らに何を要求できようか。フットボールは確かにこの夏、イングランドに帰ってきた。」

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