気分調整剤(気分スタビライザー)

リーマス(リチウム)【炭酸リチウム】
 本来は抗躁剤として登場したが、躁うつの波を抑える作用がある。

近年はうつ治療において、抗うつ薬だけで無効、
あるいは十分な効果が得られていないうつ病の場合、
リチウムや甲状腺ホルモンを併用することがあり、
これを強化療法 augmentation therapyと呼んでいます。

だいたい5割程度に有効であるとされていますが、
この用途のために適切なリチウムの用量は今ひとつはっきりとは分かっていません。

眠気が無いので使いやすいが、欠点もあります。

 1)リチウム中毒.........血中濃度を測って適正量にしておかないと
嘔吐、下痢、振戦、歩行障害などが出現します。
 2)多飲   3)振戦  4)やや体重増加

リチウムはまた、統合失調症に伴う
「言いようのない不安」の症状軽減に効果があるという報告があり、
この目的のために使用されることもあります。


デパケン(セレニカ=ハイセレニン=バレリン)【バルプロ酸ナトリウム】
  (4剤とも同じものだが、デパケンとセレニカにはRがあり、1日1回が可能。)

   デパケンは、慎重に始めるなら、夜一回100〜200mgで始め
     (
医薬品の添付文書では「400〜1200mgを1日1〜2回に分けて経口投与」と、書かれています。)、
   何とも無ければ、朝を追加。

   初期は、眠気やだるさなどの様子をみながら、
   朝、夜や朝、昼、夜など1日2〜3回に分けて漸増。
      馴染んだら、夜一回にまとめましょう。

 これも抗てんかん剤であり、抗躁剤であったものが、
現在では、統合失調症や(躁)うつ病の気分安定薬として、広く使われるようになった。

デパケンは、人によっては初期の眠気や、
空腹時に服用すると嘔気を生じることがあること、
若干太りやすくなること、まれな肝障害以外、顕著な副作用が無く、
スタビライザーとしては、最も使われやすい薬です。

近年はスタビライザーとしてだけでなく、抗精神病薬の補助強化療法に使われ、
難治性の精神病にも積極的に使われようとしている。
抗うつ剤の強化作用もあるが、こちらはリチウムにはやや劣るような印象がある。


※自分流ですが、リチウム(リーマス)は、
眠気が苦手な人で、併用薬が少ない人に使います。
薬理学的には、リチウムとSSRIの相性はよくありません。
しかし、慎重投与で盛んに使われています。

一方、デパケンは、睡眠が欲しい人で、併用薬が多い人に使います。
但し、再発を繰り返しやすい人には、両方を使います。
一般に、リーマス、デパケン同時併用は、躁状態の時の処方です。

デパケンは、抗躁作用だけ。
リーマスは、抗鬱、抗躁作用あり。

(デパケンRとリーマスの違い)
@前者は↓のみ。後者は、↑にも↓にも働く。
A前者には、食欲増進あり。
B前者には、眠気あり。

躁鬱タイプで不眠が出やすいなら、デパケン。
鬱タイプで元気が無いなら、リーマスでしょう。

(デパケン、リーマスの効果)
 @抗てんかん作用
 A抗躁作用 
 B気分安定化作用(スタビライザー)
 C(非定型)抗精神病薬強化作用



ランドセン(リボトリール)【クロナゼパム】
  ベンゾジアゼピン類の中で、唯一抗不安剤の適応ではなく、
抗てんかん剤の適応があります。
これも又、気分スタビライザーとして使い、抗パ剤使わずに
ランドセンで済ませることができれば、後々の治療に有利となります。
特にアカシジアには有効です。


テグレトール(テレスミン)【カルバマゼピン】
  リーマス、デパケンと違って、主として抗躁剤として使われ、
本来の抗てんかん剤としての使用よりも多いくらいです。
但し薬疹や眠気、うつや譫妄などの副作用があり、簡単に使える薬ではありません。

ラモトリジン情報

 ラモトリジンは、抗てんかん薬として開発された薬ですが、
2つの二重盲検比較試験により双極性障害の病相予防効果が証明されており、
リチウムに次いで予防効果のエビデンスレベルが高い
気分安定薬と言っても過言ではありません。
また、双極性障害のうつ状態に対しても有効であることが証明されています。
更に、急速交代型双極性障害に対する二重盲検比較試験で、
双極I型障害には有効でなかったものの、双極II型障害に有効であったと報告されています。
躁状態に対しては、リチウムと同等の有効性が示されていますが、
うつ病に比べるとやや劣るようです。副作用としては、発疹があります。

リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピンという他の気分安定薬では
抗躁作用の方が強いのに対し、ラモトリジンは抗うつ作用の方が強いという、
異なった作用プロファイルを持っており、
新しいタイプの気分安定薬として大いに期待されるところです。

アメリカでは、2003年に双極性障害の維持療法の適応を受けており、
それを受けて、アジア各国でも既に使われているようです。

 ラモトリジンの双極性障害に対する臨床試験は、
日本では検討中とのことですが、まだ行われていません。

 一方、てんかんに対する臨床試験がGlaxoSmithKline社により行われ、
既に終了し、承認申請が行われており、
まだ厚生労働省により審議中とのことです(2006年3月27日のメーカー情報)。

 先日訪問された米国のCoyle教授と話した際、
日本ではフルオキセチンもクロザピンもラモトリジンも使えないのですよ、と説明したら、
驚くと言うよりも、もはや哀れむような表情で、
「じゃあ一体どうやって治療するのか?」と聞かれてしまいました…。

 てんかんの治療薬として発売されても、残念ながらすぐには使うことはできませんが、
双極性障害の適応取得に向けて、少なくとも一歩前進にはなりますので、
早期の承認を大いに期待したいところです。