ご存知の方も多いはず。
気象予報士の藤田真司氏より対談依頼を受けました。
お互い多忙な毎日ですが、なんとか「真面目な対談」が実現したのでその内容を掲載します。
少し長文ではありますが、印刷しても良いので、
一人でも多くの皆様に最後まで読んでいただけると嬉しいです。
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「対談者プロフィール」
【藤田真司】
「藤田真司の気象予報士塾」塾長
1978年
奈良県生まれ。1996年に17歳で気象予報士試験合格、
1999年から読売テレビにて気象キャスターを務める。(〜2005年)
2001年に同志社大学卒業後、株式会社ウェザーニューズ勤務を経て、
2005年に独立、現職に至る。
http://rojiura.jp/weather.htm
【SnowDrop】
Webページ「SnowDrop〜独学で気象予報士を目指せ〜」管理人
無料メールマガジン「〜独学で気象予報士を目指せ〜1日1問模擬テスト」発行人
1981年
新潟県生まれ。
2002年
ヒートアイランド現象の研究に携わり、土木学会より学会賞を受賞。
2004年
気象予報士試験に合格。
2005年
Webページ「SnowDrop〜独学で気象予報士を目指せ〜」を開設し、
独学で気象予報士試験に挑戦する人々を応援し続けている。
現在は、建設コンサルタント会社に勤務する傍ら、
土木と気象のさらなる融合を目指して奮闘中である。
【1,どのくらいの勉強量で気象予報士試験に合格できたのか?】
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Snow:私が勉強を始めたのが2003年の7月頃からです。
1日平均約1時間の勉強をして、2003年冬の試験を受けました。
藤田:結果はどうでしたか?
Snow:学科の一般知識のみ合格でした。他は玉砕です・・・(笑)
藤田:上出来じゃないですか。私が最初に受験したときは、
全部落ちましたからね。(笑)
Snow:次こそは!!と思い2004年夏の試験に向け、
平日の勉強時間は1日平均約1時間なのですが、
休日に4時間くらい狂ったようにしていた記憶があります。
一般知識の方は前回の試験で合格して免除になっているし、
実技の勉強もかなりやっていたので、これはいける!!と思ったのですが、
残念ながら学科の専門知識で合格ラインに達せず、
実技試験は採点さえしてもらえませんでした。
この試験の直後、私は目の前の壁のあまりの高さに少し鬱ぎみになり、
3ヶ月間くらい全く勉強しませんでした・・・。
ただ飲み会はよくしていましたが(笑)
藤田:ああ、分かる、分かる。
「もう自分は一生合格できないんじゃないだろうか〜」って
思ってしまうんですよね。
Snow:そうなんですよー。
でもここで諦めたら今まで使った参考書代と受験費用がもったいない、
と思い再起しました!!
そして最後の力を振り絞り2004年冬の試験に向け、
1日平均約3時間の鬼のようなスパルタ勉強を決行しました。
その結果、めでたく合格することができました。
藤田:受験勉強中の「飲み会」が良かったんじゃないですか?
と言いますのも、大切なのは「スパルタ勉強」を長期間続けることが
できるかなんですよね。
いくら奮起しても、それが一時的なものであっては、
この試験を突破することなどできないわけです。
そのためには、ちょっとした息抜きも大事だと思うんですよ。
頑張り続けるための「充電」って大事ですよね。
もっとも、それが長くなりすぎて、
「放電」になってしまってはダメなんですが。(笑)
【2,二人が合格まで勉強を続けられた原動力とは?】
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Snow:私の原動力は一言に尽きます。「気象が好きだからです。」
藤田:それはお互いそうでしょうね。好きでないと勉強は続けられない。
Snow:いつもこんなに身近にあるのに気まぐれで未知なものって、
他には無いと思います。とても魅力的です。
藤田:昔、朝焼けの写真を撮ることが好きだったのですが、
同じ晴れた日の朝であっても、
日によって空の色が違うことに気づきました。
Snow:朝焼けですか。すごく幻想的ですよね。
藤田さんにとってはそれが原動力になったのですか?
藤田:いいえそれだけではありません。
私の場合は「どうしても17歳のうちに合格したい!」
というこだわりもありましたね。
といいますのも、第4回気象予報士試験において、
17歳で合格した方が話題になっていたのです。
Snow:・・・もしかして、その方は?
藤田:お察しのとおり、アカペラボーカリスト「RAG
FAIR」の奥村政佳君です。
ですから、私も何とか17歳のうちに合格したかったんですよ。
私が合格したのは第5回気象予報士試験で、そのときの年齢は17歳11か月。
本当にギリギリでした。
Snow:奥村さんのことはニュース番組でも話題になったことを覚えていますが、
すると、藤田さんもいろいろ取材が殺到したんですか?
藤田:全くなし・・・。(笑)
だからこそ、「一度テレビに出てみたいものだ」
という思いが強まったのかも知れません。
【3,一人で勉強を続けるうえで大変だったことは何か?】
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藤田:私が気象予報士試験に挑戦しようと思い立ったのは、1994年の秋でした。
Snow:ちょうど初めての試験が実施されて間もない頃ですね。
藤田:そうです。今でこそ書店には「試験対策本」が、
ずらりと並んでいますけれども、当時は非常に少なかったのです。
東京堂出版から出ていた『天気予報の技術』を手に入れましたが、
その内容の難しさには、本当に頭を悩ませました。
分からない用語を調べるために、1万円くらいする事典も買ったのですが、
調べた先に出てくる文章の中にも、分からない用語が・・・(笑)。
「質問をしようにも相手がいない」という状況には参りましたね。
仕方がありませんから、
何度も何度も本を繰り返して読んだ記憶があります。
そうすると、少しずつですが内容が分かってきました。
Snow:私も周りに気象予報士がいなかったため、
一人で勉強することはもちろん大変でしたが、
それよりも気象予報士試験を受験できる最低限の環境を
つくることが大変だったのを覚えています。
藤田:といいますと、具体的にどういったことですか?
Snow:私が気象予報士試験を受けようと思ったのは、2003年の夏です。
当時の私は20歳の貧乏学生でした。
奨学金を少しだけ借りていましたが、親からの仕送りが全く無い状態で、
食費・アパート代などの生活費すべてを賄わなければならず、
アルバイトをする毎日でした。
藤田:それは大変な状況だったのですね。
学費だけでも結構高いのではないですか?
Snow:学費は学校側に免除申請が認められたため、
払わなくて良かったのはせめてもの救いでした。
そんな過酷な貧乏生活の中で私が苦労したのは、
価格の高い参考書を買うお金と高い受験料です。
藤田:気象関係の本って、一般の書籍に比べると高いですよね。
Snow:まぁ私の場合は中古のものばかりでしたが・・・(泣)。
それと新潟県は受験地ではないので、
一番近い受験地である東京までの交通費も洒落になりません。
藤田:まさに「身銭を切って」気象予報士試験に臨まれたのですね。
受験料も学生にとっては決して安い値段ではありませんし。
でも、それが「早く合格しなければ」という
原動力につながったのだと思いますよ。
【4,気象予報士になってから、資格をどんなことに活かせているか?】
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藤田:私は17歳のときに試験に合格した後、縁あって大阪のテレビ局で、
気象キャスターとしての仕事を始めることができました。
そのときの年齢が20歳、大学2年生でした。
調べたわけではありませんが、
男性で気象キャスターの仕事に就いた人間としては、
最も若かったのではないでしょうか。
まして、私はタレントの素質も全くなかったわけですから、
こういった仕事に就けたのは、
気象予報士という資格のおかげだと思います。
Snow:現役の大学生のときに、キャスターとしてデビューされたのですね。
大学を卒業された後はどうされたのですか?
藤田:ウェザーニューズという民間気象会社に入社しました。
学生時代はキャスターの仕事だけでしたが、
ウェザーニューズの社員になってからは、放送局における天気予報全般、
つまり、アナウンサーが読む原稿を書く仕事なども行いました。
Snow:すごいですねー。文章力の無い私には到底できそうもありません。
私の場合、直接的に資格は活かせていません。
というよりも活かす努力をしていません。
でも気象の知識そのものは、間接的に仕事に活かせることがあります。
どんな分野でも地球上に住んでいる限り、気象って必ず絡んでくるんじゃないでしょうかね。
【5,お勧めしたい参考書】
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Snow:私のホームページでも紹介済みですが、
その中でも、『一般気象学』(東京大学出版会)は、
絶対に購入しておいたほうが良いと思います。
藤田:小倉義光先生のご著書ですね。私も受験するときに購入しました。
今は改訂版が出ていてさらにパワーアップしていますね。
Snow:「気象予報士塾」の講師という視点から見て、この本はいかがですか?
藤田:この本の素晴らしいところは、
初歩的な気象学をとても丁寧に解説してあることです。
講師になってからも、蛍光ペンで線を引いて読んでいますよ。
Snow:まさに気象のバイブル的な書籍ですね。
藤田:私は著者の小倉先生にサインしていただきましたよ。(笑)
ただし、この本は「気象予報士試験対策本」として、
出版されたものではないですから、
例えば、一般知識試験の「気象法規」や専門知識試験の範囲は、
他の書籍で勉強する必要がありますね。
あと、特に初めて気象を学ぶ方にとって、
『一般気象学』は難しすぎる部分もあります。
途中で挫折しないためにも、ナツメ社から出ている、
『気象予報士試験
徹底攻略テキスト 改訂第2版』で、
勉強されるのも良いかと思います。
Snow:それは言えてますねー。
初めて気象を学ぶ人には、俗に「試験対策本」と言われるもので、
かつ図や写真が多く載っているものの購入をまずはお勧めします。
【6,防災士を取得した理由】
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藤田:SnowDropさんは気象予報士のほかに、
「防災士」という資格を持っておられますね。
この資格を取られたのはどうしてですか?
Snow:私が防災士を取得した理由は、気象予報士としての義務感からです。
私は過去に7.13水害や新潟県中越地震などの様々な災害を経験しました。
藤田:両方とも、2004年に発生した大きな自然災害でしたね。
Snow:そうです。おまけにその年の冬には豪雪災害も起きました・・・。
これらの経験で、私自身の防災の知識がゼロであることに気づいたんです。
気象災害が多い現代に、気象予報士が防災の知識を持ち合わせていない
ことに矛盾を感じたため取得しました。
まぁ正直なところ、取得したことに若干の後悔はありますが・・・。
【7,将来の夢について】
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Snow:私の将来の夢は起業することです。
どんなに小さな会社でも構いませんが、
気象と何か他の分野を組み合わせた形の業務をしたいと考えています。
日本は平成5年に気象業務法が改正され、気象業務が自由化されました。
その時、大手のシンクタンクでは、
日本の気象業界は躍進すると言われていました。
藤田:「気象ビジネスは1000億円規模に達する!」
と言われていたことを思い出します。
Snow:しかし、実際はどうでしょう?
藤田:私が奉職していた株式会社ウェザーニューズは、
東証一部上場を果たしましたが、業界全体として見るならば、
まだまだ民間気象会社は伸び悩んでいますよね。
Snow:そうですね。気象部門が黒字のところなんか
本当に数えるほどしかないんじゃないでしょうか?
日本では気象情報が無料のものだという認識が蔓延しているので、
もう気象情報の提供のみでコンスタントな利益をあげていくのは
無理だと思います。
気象分野以外の何か付加価値をつけなければならないと思います。
藤田:花粉症の方が「スギ花粉の飛散予報」という情報を重視するように、
気象をベースにした総合的な情報が求められているわけですね。
Snow:7年前位からいろんなアイデアは蓄積してきましたが、
もう少し時代を見据えて、
「チャンス」があれば起業したいなと思っています。
気象業界で一緒に戦う戦友も見つけなければなりませんし。
藤田:私にできることがあれば、ぜひ協力させて下さいよ。
Snow:そのときはぜひ!