「☆さぁあの雲を追いかけよう!!☆」


みなさんは空を見上げて、雲を見たときに何を感じますか?
わたあめに似ているだとか、ドーナツに似ているだとかそんなことを考えたことありますか?
同時にそのわたあめやドーナツの下まで行ってみたいとか思ったことはありませんか?
では、その雲っていったい今いる地点からどのくらい離れているのでしょうか?
単純な疑問ですが、意外にむずかしいです。

そんな疑問に答えるため、独自に「雲高度・水平距離の推定グラフ」を作成しました。
まずは↓こちらのグラフをA4版横のカラーで印刷してください。
http://www16.plala.or.jp/SnowDrop/cloud.jpg

雲までの水平距離は三平方の定理を使うと求まるというような話を耳にしますが、
三平方の定理を使ってしまうと、地球自体の曲率が表現できず、雲の高度も地面に対して垂直方向ではなく、斜めの方向になってしまって誤差が大きくなるのではないかなぁ?と思いましたので、
三平方の定理は用いず、CADで仮想地球を描いて実測等を行ったものをグラフ化しました。
条件は下記のとおりです。
念のため緯度や方位を設定しましたが、これが違っても結果が大きく変わることはないと思います。

「条件」
・地球半径(楕円)・・・赤道半径=6378.1km 極半径=6356.8km
・緯度・・・北緯45°
・方位・・・北方向を望む
・雲種別高度・・・一般的に言われている値
・視界・・・良好であり、遮るものはなし(地球自身を除く)
・角度・・・天頂角=90°
・対流圏界面・・・高度=11km


推定グラフの見方は非常に複雑なので、要点説明だけしてから例題形式で以下に示します。

「推定グラフの見方(要点説明)」
・現在あなたがいる地点は高度0km、水平距離0kmです。
・右上がりの太い黒実線は見上げ角0°(水平方向)の線であり、遠くのものが見える限界の境界線です。
 マイナスの値になってしまうと、地球自体に視界が遮られ、0°の時よりも遠くまで見えません。
 逆にプラスの値になってしまうと、地球の曲率の影響で遠方にある高さの低い物体はすぐに見えなくなります。
 (要は、右上がりの太い黒実線よりも左側の領域は今いる地点から見えて、右側の領域は見えないということです。例:200km先にある高度3kmの雲は見えないが、高度5kmの雲は見える。)
・色付きの枠線は各種の雲が表れるおおよその高度の範囲を示しています。

「グラフの見方(例題)」
例題1)

水平方向に対して5°の角度に高積雲が見えた。
この高積雲は今いる地点から水平距離でどのくらい離れた位置の上空にあるのか?
「解答・解説」
水平距離でおおよそ20kmから60km程度離れている。
見上げ角=5°の線と高積雲の緑色の枠線の交点に着目すると水平距離がわかる。

(例題2)
はるか彼方の水平線ぎりぎりに積乱雲が見える。
この積乱雲は今いる地点から水平距離でどのくらい離れた位置の上空にあるのか?
「解答・解説」
水平距離でおおよそ80kmから350km程度離れている。
見上げ角=0°の線と積乱雲の黄色の枠線の交点に着目する。
☆積乱雲の存在する高度には非常に幅があるため、水平距離の推定は難しい。
ただし、対流圏界面で広がっているような雄大積雲であった場合は、雲頂高度が対流圏界面と同じであるので、おおよそ300km〜400kmくらい離れているという推測は成り立つ。

(例題3)
A君の家から水平距離で約30km離れているU子ちゃんの家の真上に雲があります。
U子ちゃんはこの雲の種類をどうしても知りたくて気象予報士のA君に電話しました。
気象予報士のA君がU子ちゃんの家の上空を眺めると、あいにく他の雲に大部分が隠れてしまっていて、
肝心の雲の種類がわかりません。
そこで試しにおよその見上げ角を測ったところ8°くらいでした。
さぁこの雲の種類はなんでしょう?
「解答・解説」
高層雲か高積雲である。
見上げ角8°くらいのところと水平距離30kmの交点の位置より推定する。

(例題4)
水平方向への広がりがあまりない鉛直方向に若干発達した高積雲が見える。
この高積雲の雲底の見上げ角は5°であり、雲頂の見上げ角は10°である。
この高積雲のおおよその厚さはいくらでしょう?
ただし、この高積雲は水平距離で20km離れた山の上空に存在するものとします。
「解答・解説」
厚さは約1.5kmである。
見上げ角0°の線と見上げ角5°の線、水平距離20kmの線、高積雲の緑色の枠線に着目する。
雲頂高度から雲底高度を差し引くこと。

(例題5)
見上げ角10°の方向からこちら側へ巻積雲が近づいてくる。
この巻積雲はおよそ何時間後にあなたのいる位置の真上付近まで到達するか?
ただし、高層天気図を見たところ、上層にジェット気流が流れており、風速は30km/sである。
(風速と雲の流れる速度を同一であると仮定すること)
「解答・解説」
およそ1時間〜2時間後に到達する。
見上げ角10°の線と巻積雲のマゼンダ色の枠線の交点に着目すると、
水平距離はおよそ30km〜60kmであるとわかるので、その値を雲速度30km/hで割り返す。


(例題6)
最新の衛星画像解析技術より、厚さが8km程度だと分かっている積乱雲がある。
この積乱雲の雲底の見上げ角が5°であり、雲頂の見上げ角が20°である。
今いる地点から水平距離でどの程度離れているか?
なお、水平方向の広がりはほとんどないものとする。
「解答・解説」
およそ30km程度離れている。
見上げ角20°の線と見上げ角5°の線の高度差が8kmである水平距離に着目する。

(例題7)
海で航行をしていると前方に乱層雲が広がっているのが見えた。
乱層雲の雲底の見上げ角はおよそ0°と5°である。
(水平方向に広がりが大きいため、自分から遠い方の雲底と自分に近い方の雲底の角度である。)
この乱層雲の水平方向の大きさは理論上は最大で何kmであるか?
「解答・解説」
最大でも70km程度である。
乱層雲の青色の枠線の上部ギリギリのライン上で、見上げ角0°の線と見上げ角5°の線の水平距離の差を読み取る。




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