メタナイトはふと目を覚ました。
寝転がっている場所は原っぱのような場所。しばし真上にある雲のない空を見つめると、むっくりと起き上がった。
周りを見ると、それは小さな広場だった。陸の外は海。
そして右側にはぐしゃっとつぶれたハルバード。部品やその他中に入っていたものが散らばっている。左側にはのびたワドルディと、折れた翼の先っちょをまくら(?)がわりにしているソードナイトがいた。
メタナイトはマスターソードをワドルディに向けたが、起こすのも悪いと思って降ろす。
そして広場を後にした。


少し歩くと、村らしき場所についた。少しその場でぼーっとしていると、横からモ〜ッと鳴き声がした。
振り向くと、白黒の牛が真っ黒いつぶらな瞳をこちらに向けていた。
「……牛」
ぼそっとつぶやくと、村の中に入っていった。
歩いてまもなく、牧場を見つけた。ヤギや牛がの〜んびりと日向ぼっこをしている。その脇で、紫カービィがせっせと藁をかき集めていた。
ここのことを聞こうと思っていたが、忙しく働いているのを見ると声をかけるのもためらう。メタナイトはその場で少し仕事を見ていた。
すると、メタナイトの足元で眠っていたヤギが鳴いた。ゆっくり起き上がり、メタナイトを見てまた鳴いた。大きな歯があらわになる。
メタナイトはヤギなんぞそんな見たことがない。その顔をまじまじと見つめた。
「おや?観光客さんかいな?」
ヤギの鳴き声で駆けつけた紫カービィが言った。藁をかき集めるくわを持ったままである。
「観光客……じゃないな。ちょっと戦艦が不時着してしまってな。ところでここはどこだ?」
メタナイトは紫カービィに言う。ヤギの頭をなでながらも、紫カービィは答えた。
「ここはフローリア島の一番南にある村、ディオールや」
紫カービィはどんと胸を叩いて言った。
「わてはグロック。ここで牧場をしている農家のもんや。以後よろしゅうな」
グロックと名乗った紫カービィは、メタナイトの顔をまじまじと見つめた。
「あんた、わてらに似とる体格してるなぁ。カービィか?そんな仮面外して顔見せちょくれ」
グロックは柵の間から手を伸ばした。メタナイトはとっさにその手をよけた。
「この仮面は外せない。それに、オレはカービィとは違う」
それを聞いたグロックは、しぶしぶと手を引っ込める。
「な〜んや、残念。……そや兄ちゃん。村長はんには挨拶しに行ったんかい?」
「挨拶?行っていないが」
グロックはほふ〜っと一つため息をついた。
「挨拶しにいったらいいで。この村のこと、詳しく教えてもらっちょくれ」
メタナイトはグロックをまじまじと見つめた。こいつが教えてくれるかと思っていたらしい。
「お前が教えてくれるんじゃないのか?」
「ん〜……教えてあげたいのはやまやまなんやけど、こっちには仕事があるんや。そろそろエサやりの時間やしな」
「そうか……しかし、オレと話している時間も仕事をする時間だったんだろう?邪魔をして悪かったな」
グロックはぼりぼりと頭をかきながら、にかっと笑った。
「えーのえーの。兄ちゃんとのお話、おもしろかったで」
すると、近くの牛やヤギ、小屋からいろいろな鳴き声が風にのってやってきた。
「おやおや、奴らがしびれ切らしてないちょる。早くしなきゃ牛に吹っ飛ばされるわ。ほな兄ちゃん、さいなら。村長はんの家なら小さな池がある家やで」
グロックはそういうと、急いで小屋に戻っていった。
そんな後ろ姿をしばし見送ると、メタナイトはグロックの言われたとおり、小さな池のある家を探しだした。


村長の家はすぐに見つかった。池には色鮮やかなコイが気持ち良さそうに泳いでいる。
その池の後ろにある木に、ブロントバードが一人本を読んでいた。
メタナイトが敷地内に入ってくると、ブロントバードは分厚い本から顔をあげた。
「村長はどこにいる?」
「家ン中」
ブロントバードは軽く答えると、また本に顔を向けた。
ドアの前に着き、ノックする。しかしなかなか出てこない。数回ぐらいノックすると、ようやくドアが開いた。
そこにいたのは、キリリとした顔をした緑カービィだった。
「誰?」
緑カービィはメタナイトを見ていった。声からして女だ。
「オレはメタナイト。お前は誰だ?」
メタナイトが問いかけると、緑カービィはビックリした顔をした。と思ったら、すぐに飽きれた顔でため息をついた。
「あたしはショコラ。ここディオールの村長だ」
メタナイトはその言葉にビックリとがくぜんをあらわにした。

続く