「神智学大要」より転載

生と死における人間の営みは自分が何であるか、世界とは何であるか、「われわれがその中で生き動き、かつわれわれの本質を持つ」神とは何であるか-を見い出すことである。
この「神秘に包まれたる神の英智」の何たるかを把握しかつ「神の経綸すなわち進化」の何たるかを理解し始めるまでには長年月にわたる経験と行動が必要である。
自分自身と他の人々との中にある土の性と獣の性と神の性とを知ること-それが彼の永遠の仕事である。
全生涯が自分に仕事を教えてくれる工場であり、そこに来て手伝ってくれる人々はすべて皆教師である。
これが彼の時代における宗教であり、哲学であり、科学であり、芸術なのである。
彼の受けなければならない苦悩もまた、自分を鍛えてくれる教師なのである。
しかし、彼のあらゆる教師のうちでも最も歓迎されうるのは、神の経綸を明らかにし、他のいかなる啓示にもいまだかって見い出されたことのない程の魅力を心に与え、インスピレーションを胸にもたらす神智学という秘められたる英智である。


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神智学(しんちがく、Theosophy)とは、19世紀ブラヴァツキー夫人を中心として設立された神智学協会に端を発する神秘主義密教秘教的な思想哲学体系である。全ての宗教思想哲学科学芸術などの根底にある一つの普遍的な真理を追求することを目指している。

語源

神智学(Theosophy)という用語は、古代ギリシャ語の θεοσοφία(Theosophia)を語源としており、直訳すると「神聖な叡智」という意味になる。3世紀のギリシャの思想家であるアンモニオス・サッカスとその弟子達(オリゲネスプロティノスなど)が使い始めたという。[1]また、Theosophia という用語は、近世初期の神秘主義思想にも使用例が見られる。

三つの柱

一般的な神智学の思想は、次の三つを柱としている。[2]

基本的な思想

神智学は、様々な宗教や思想を一つの真理の下で統合することを目指しているので、その中では、当然、様々な宗教や神秘主義が扱われることになり、例えば、古代エジプト神秘主義ヘルメス思想ギリシャ哲学キリスト教新プラトン主義グノーシス主義カバラヴェーダバラモン教ヒンドゥー教ヨーガ仏教ゾロアスター教フリーメーソン薔薇十字団魔術錬金術占星術心霊主義神話、などが様々な文脈の中で引用されたり語られたりしている。

その主張によると、神秘主義やオカルトの奥義は、それが支配する力の大きさや危険性から、どの時代においても一部の選ばれた少数の人間にのみ伝授され守られてきたという。神秘主義やオカルトに関する知識は、自分自身の内的な認識、超能力神秘体験、霊覚、直接的な観察などによって得られるとされるが、神秘主義の思想家達は、古代のエジプトやインドの賢者達も含めて、外部の様々な現象を分析し客観性や合理性を重視する実証主義的な現代の科学者達よりもある意味では優れた認識や理解を持っているという。

そのような神秘の奥義を伝授されている人間は、一般的に「秘教への参入者」と呼ばれるが、その中でも特に奥義を体得している者達は、様々な超常的な力(物質化テレパシーなど)を持っていたり、肉体を通常よりもかなり長い期間に渡って維持していたり、宇宙の諸現象の理解や人類への愛の面で卓越していたりするという。神智学協会の設立者であるブラヴァツキー夫人は、それらの参入者達に師事して教えを授かったとされる。神智学では、それらのオカルトの達人達を「偉大な魂」(マハトマ)や「大師」(マスター)と呼んでいる。また、それらの大師達の組織を「ハイアラーキー」と呼んでいる。

具体的な思想としては、万物の一元性、宇宙や文明や人種の周期的な発生と衰退、三位一体の顕現、太陽系や人間の七重構造、厳正な因果律、輪廻転生、太古の文明、超能力、高次の意識、原子や鉱物や惑星の進化、生命体の進化に伴う天体間の移動、などが説かれている。

代表的な流れ

第一世代

神智学協会が設立されて間もない頃の代表的な論者としては、ブラヴァツキー夫人ヘンリー・スティール・オルコットアルフレッド・パーシー・シネットなどがいる。

ブラヴァツキー夫人の著書としては、神智学協会の設立の経緯や神智学の基本的な思想についてQ&A形式で答える『神智学の鍵』や、人類や宇宙の創造や進化ついての壮大な思想を展開する『シークレット・ドクトリン』(秘密教義)などがある。

第二世代

ブラヴァツキー夫人が亡き後、神智学の著作活動において中心的な役割を果たしたのは、神智学協会の二代目会長であるアニー・ベザントチャールズ・レッドビーターである。

第一世代の神智学においては、神智学やオカルトの様々な概念を表す際にヴェーダやカバラなどの一般人にはあまり馴染みのない用語が使われていたが、この二人は、それらの用語をより一般的な英語の用語に置き換えるように努めるなど、それまではややもすると難解であった神智学の思想を一般人にもわかりやすく整理し体系化した。(例えば、Kâma-loka を Astral Plane に、Sthûla Sharira を Physical Body に、など)また、この二人は、神智学の入門書のシリーズ[3]やその他の本[4]を何冊か共同で執筆している。この二人が書いた本は、合わせて数十冊になるが、それらは、アーサー・E・パウエルによって編集してまとめられ、日本では、その翻訳が全九巻の『神智学大要』として出版されている。

第三世代

アリス・ベイリーは、ジュワル・クール師からの依頼を受けて21冊の本を足掛け30年に渡って書き取って出版した。これらは、ブラヴァツキー夫人やアニー・ベザントの時代の神智学の思想を発展的に解説するものだった。