医学博士 今井英彦

自殺の可能性を常に念頭に

 うつ病においては、症状の軽い、重いに関係なく、かかり始め治療が終了するまで、常に自殺の可能性があるのです。
なぜなら、うつ病は、「生きる意欲」自体をを失わせる病気だからです。

「生きよう」「生きたい」という思いがわかず、「生きていてもしょうがない」「死んでしまいたい」という悲観的な思いが付きまとうのです。


「助けて」と言えるような日頃のコミュニケーションが大切

とにかく聞く


やってはならない三つのこと

1.当人を前にして、「私も苦しい」などと愚癡をこぼす
  これは、当人をより苦しめることになります。”周囲に迷惑を掛ける自分なんて、いないほうがいい”となってしまうからです。

2.しかる
  これは、当人を追い詰めることになり、ただでさえ、せっぱ詰まっているのに、より孤立させてしまいます。

3.お説教
  例えば、当人がリストカットなど、自傷行為に及んだとしましょう。二度と起こさないよう、やってはならないことを理屈で理解させようとしてはいけません。自傷行為それ自体が理屈を超えた行為ですから、それを理詰めで説得しようとしても通じるわけがありません。
家族にも分かってもらえない”と孤独感が増すだけです。


聞く

当人の言ったことには、まず、うなづく。どんな内容であっても、話の腰を折ったり、反論したりしないで、必ず受け入れてください。
そして、当人の言ったことを、まず「支持」する。
 当然、納得できないことや、こちらの意に反することもあるでしょう。それでも、「そうやね」と声に出して言うのです。
同意していることを伝えるのです。
 それが、どれだけ当人の心の支えになるか。
こうした「支持」の積み重ねが、周囲や家族との”絆”を少しずつですが、確実に、太く、強くしていくのです。
 ここに、うつ病を治していく大切なポイントがあります。


「励まし」について

 よく、うつ病の人を「励ましてはいけない」と言われます。
特に、プレッシャーを掛けるような励ましの言葉は、当人を苦しめるだけです。

 うつ病を治すには、安心という「励まし」が必要だと思っています。
「今のままでいい」「休んでいい」「必ず良くなるから」と、ゆっくり休養している当人の現状を認めて、寄り添うようにする。
これが、励ましになります。
 当人に何かをさせるのではなく、”一緒にやろう”と行動するのが大事でしょう。
できても、できなくても、当人が取り組めたことを喜ぶ。ほめる。そうしたことが、当人の自信になっていきます。
こうした「励まし」の繰り返しが、うつ病を治していくのです。

「大白蓮華」2008年6月号より転載