ハナガメ


ハナガメが来た
花を背おって来た
遠い海の彼方からやって来た

ハナガメは陸(おか)へあがった
そこは大きな陸だった
そこには何もなかった

遠い昔、その陸にはあらゆるものがあった
それが、ある日、とつぜん、すべてが消えた
それ以来ここには何もない

  ―――

何もない陸にハナガメは背中の花を落としていった
そしてまた海へ帰っていった
後には花だけが残された

けれども花はすぐに枯れてしまう
またすべてが消えてゆく
ハナガメはそのことを知らない

ハナガメは帰っていった
無心のままに
遠い遠い海の彼方へ



 

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