 午前５時半起床。すさまじい鼾
が響き渡る部屋を抜け出し「ひまわり」の中を探検する。学校ベースの施設でありながら、あまり学校っぽい場所はない。今回のように降り込められたとき、屋
内撮影にシフトできるのか否か、ロケ好適地の少ない夕張では重大な問題である。
フロントでは、早起きの管理人さんが今朝の新聞を用意している。他に人もいないので、この施設のことについていろいろと話を伺う。教室はすべて客室に改
装され、学校だった当時そのままの部屋は一つもない、という。唯一の例外は体育館で、そこだけは全くなにも変わっていないらしい。
せっかくの学校建築、ロケをやらない手はない。体育館を借りるとしたらいくらかかるのか、と聞くと、今は宿泊客に限りタダ、という答えが返ってきた。早
速案内してもらって、体育館を下見する。
そこは確かに往時の姿そのままを保っていた。演台やピアノ、暗幕などまさしく「学校」である。これならわざわざ外出せずとも十分に撮影できるだろう。自
由に使っていいよ、と許可を得た壇上のグランドピアノを弾きつつ、誰もいない体育館でひとくさり学校ロケの構想を練る。
いいかげん手の甲が痛くなってきたので、部屋に戻る。
そろりそろりとそれぞれが起き出してくる。カーテンを開けると外は霧雨。今日も外ロケは無理のようだ。この施設は朝風呂不可だから、朝飯を食べる以外、
部屋撮ぐらいしかやることがない。早めにチェックアウトして「夕張鹿鳴館」へ行く前にどこかでロケ、なんてわずかな希望的観測もしてみたが甘かったよう
だ。
結局10:00にチェックアウト、「夕張鹿鳴館」に直行する。
前日許可を得たように直接車を乗り付けると、なんと管理人さんが玄関先で待っていた。篠つく雨の降る中、恐縮しきりである。（私の勘違いであればいいの
だが）
まずはみんなで元気にご挨拶。迷惑最小限主義で搬入を手早く済ませ、入場料を支払ったあと、大広間で集合写真を撮るべく集結する。金屏風を背にひとしき
り撮影、その後は各自館内に散っての撮影となった。
私はむすめを移動させるのに難儀し、結局大広間のみの撮影となった。カメラテストもさることながら、実地のドレステストにもなってしまった。誠に扱いづ
らい衣装である。これまでのロケの中で最も体力を消耗したと言っても過言ではない。今回は機材が少なかったからまだなんとかなりはしたものの、来るべき９
月の本番に向け、多少不安の残る結果となってしまった。
この日の撮影枚数はおよそ60枚。大がかりだった割に実りの少ないロケだった。ひとえに体力のあるなしが、勝敗の分かれ目だったことは言うまでもない。
重たい機材に重たいむすめとその衣装……、困ったものだ。
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